鈴音の場合4

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2004-09-10

鈴音の場合

四 カタストロフィ

 そこは深い樹海に囲まれた、見るからに多額の費用がかかっている豪邸であった。
 広大な敷地の中には、車回しの付いた屋根付き駐車場はもちろんのこと、この立地条件では贅沢すぎるであろう50メートルクラスのプールもあったし、何より建物そのものの大きさが尋常ではなかった。
 洋館仕立ての地上三階地下二階の建物は、およそ一般市民が手に入れられるようなものではない。ずぶの素人の鈴音には判らなかったが、見れば至る所に侵入者阻止装置が据え付けられてもいた。所有者は、この建物以上に尋常な人物では無いことが知れる。おそらくは、政界か経済界の大物であろう。しかも、いわゆる『裏』の。
「さあ、さっさと降りるんだ」
 男達に追い立てられる様にして、鈴音たちは車外へと転がり出た。
「こ、ここは…?」
 自分の周囲を見回せば、ここは瞭らかに人里離れた場所であることが判る。これでは万が一の救出も脱出も望むことは出来ないだろう。そもそも、ここが何処かすら判らないのであ

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