邂逅の時
2008-11-14
俺が初めてオオカミ様のお社を修繕してから永い時が経過した。
時代も、世情も変わり、年号も代わった。
日本も、日本人も代わったと言われる。
しかし俺を取り巻く世界はそれほど大きく代わっては居ない。
昔からの気持ちの良い仲間。家族。
そして見守ってくださる神仏。
俺の生活は、仕事を中心に穏やかに過ぎて来た。
一度、縁を得て所帯を持ちかけたが、諸事情により断念した。
しかし、その時にも心の中にはあの方が居り、乱れる事は無かった。
いや、だからこそ断念したのかもしれない。
今だから、そう思えるだけなのかもしれない、が。
俺は隠居した親方の後を継ぎ、宮大工の棟梁となる事が出来た。
様々な神仏、様々な神職・住職の方々、様々な弟子達と出逢い、別れて来た。
そして、今も天職として毎日を忙しく過ごしている。
俺が独り身なのを心配して、様々な方から縁談を持ち込んで頂いたが、
仕事の多忙さを主な理由に断り続けてきた。