筆おろし

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なおぼんは、京町家で書道塾を開いています。
正確には主人が塾長で、あたしが助手なのですけれども。

主人は、書道界では重鎮に属する人物で、実は四十八歳の私より十五歳も年上なんですよ。

最近はその年齢のせいもあって、主人の体の自由も利きにくくなっており、糖尿病やら心臓病やらで薬漬けの毎日でございます。
そんなわけで、ここ数年、塾は師範代の私が切り盛りしております。

塾生といっても、小学生から高校生と一部、勤め人の女性などで、年々入塾される生徒さんが減ってきております。
私たちには子供がありませんので、子供たちが家にいることをとても幸せに思うんですよ。

学生さんは、高校生ぐらいでお辞めになるのがほとんどで、やはり受験勉強のほうが大事ですからね、しょうがないことなんですけどね。

師範代として、私、辞めていく思春期の男の子には必ずしてあげることがあるんです。
恥ずかしいんですけど、お話しますね。

みなさんは「筆おろし」という言葉をご存知ですか?
文字通りですと、新しい書道用の


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