立ち食いそば屋の機転

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2015-07-19

今日、ちょうど定年退職をむかえた初老の男がひとり、

駅前の立ち食いそば屋で一杯のそばを食べている。

エビの天ぷらが一尾のっかった一杯500円のそばだ。

男は30年も前からほぼ毎日昼休みこの店に通っているが、

一度も店員とは話したことがない。

当然、話す理由なども特にないのだが、

今日男は自然に自分と同年齢であろう店主に話しかけていた。

「おやじ、今日俺退職するんだ。」

「へぇ。そうかい。」

会話はそれで途切れた。ほかに特に話題があるわけでもない。

男の退職は、今日が店を訪れる最後の日であることを意味していた。


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