もう一人の母

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2009-02-12

俺が高校の頃の雨降りの夕方、俺は学校から家に帰ってきた。
そしたら母がバタバタと仕度してた。

「あんた何やってたの?
叔父さんが亡くなったのよ。早くしなさい」

という。
どこの叔父さんだと思いながら、とりあえず用意しようとしたら電話が鳴った。
母は忙しくしてたので、仕方なく俺が電話とった。

「もしもしっ。俺だ。落ち着いて聞けっ。いいか」

かなり切羽詰った口ぶりで相手はいきなり喋りだした。
聞き覚えのある声だった。
誰の声なのかは、すぐには分からなかった。

「死んだのは叔父さんじゃない。母ちゃんだ。
いいか。絶対に振り向くな。そのままじっとしてろ」

母ちゃん?
母を母ちゃんと言い、そしてその声。
兄だ。
去年バイク事故で亡くなった兄の声だったんだ。

死んだはずの兄か

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