蜜の味
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僕が彼女を見たのは、土曜の午後、駅に隣接したファッションビルの中だった。
一目見て、胸が疼くような気がした。そういう経験ってあるだろ?
一目見ただけで、(あっ)と思うようなこと。
彼女は一人で、バッグや洋服が並んでいる売り場をながめながら
ゆっくり歩いていた。
年齢は20代なかばくらい。
やや茶色の長い髪が、肩のあたりまで波打っている。
スタイルのいい身体にぴったりはりついたブラウスから、
それとわかるような、大きな乳房が盛り上がっているのがわかる。
僕がみつめているのがわかったのか、彼女はふと目をあげて
色白の肌に大きな目。ハート型の唇がつややかなピンク色に
塗られて、まるで濡れているみたいだった。
目と目が合ったときに、彼女の方にも何かが走ったのがわかった。
それから…、僕は勇気を出して声をかけてみた。
一人ですか?とか、お茶でも飲みませんか?とか、ありきたりなことを
言ったと思う。僕達はコーヒーを