夏の思い出
2009-09-10
初めて人間の死を意識したのは小学一年生の初秋だった。
九州に住む同い年の従姉が下校途中に横断歩道を渡っていたらしい。左折してきた大型トラックの何かの突起に数百メートルほど引きずられ、翌日にはいくつかの部分に分かれたまま白装束を着て棺に納められていた。八月のどん詰まりに手を振って再会を誓ってから数週間も経っていなかった。
広島の我が家に電報が届いた。押し黙った両親に連れられて急行列車とタクシーを乗り継ぎ、約束通り彼女と再会した。棺の中の従姉はただ眠っているように見えた。今思えば高等技術を要する死化粧が施されたのだろう。その日のうちに彼女の同級生が大挙して訪れ、開け放たれた縁側の向こう、庭先に溢れかえった。
棺の前で正座したまま振り返ると、同い年の小学生たちの向こうに青々とした稲穂が見えた。代表の女の子が弔意を表す作文を読み上げた。今思えば担任の先生が注意深く書き上げた文章だったのだろう。従姉の人柄、たった数ヶ月の学校生活の様子、同級生が彼女に抱いた敬意が余すところなく淡々と読み上げられた。それは小学一年生の僕の想像力を喚起するのに充分な力を秘めていた。僕はようや