一冬の恋

開く
2009-04-07

あれはいつの事だったろうか。確か2002年の冬だったと思う。

電車から降りると、ちらちらと雪が降っていた。
吐く息が白い事に新鮮さを感じ、凍てつく歩道を歩いていた。

街路樹が白くなり始め、辺りは静まり返って時間が止まったようだった。

体が冷え始めるのが分かった。急ぎ足で自宅に向かう。
コンビニを通り過ぎ、毎朝コーヒーを買う自販機を通り過ぎた。
そこでふと赤い灯りが目に入った。
「おでん」と書かれた赤い提灯。

今までの人生で独りで飲み屋に入った事など無かった。
元来寂しがり屋なわけで、独りで呑むなら家で呑む方が気が楽だった。

しかしその日は違った。「おでん」・・・この文字に心は奪われた。

そして漏れは吸い込まれるようにその入り口を開けた。


まさに運命かのように・・・。


入り

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