奇跡待つ日
2008-11-14
「オオカミ・・・さま・・・?」
俺が呟いた瞬間、彼女はビクッと身体を震わせた。
一瞬の後、彼女の瞳からつ、と涙が溢れた。
「○○・・・さま・・・?」
彼女の口から俺の名が紡ぎ出される。
記憶の中の、あの澄んだ鈴の音のような声で。
舞い散る雪の中、どれほどの時間が経ったろう。
彼女が困惑したように口を開いた。
「あれ...?私、なんで泣いてるの...?
あれ...?○○様って...あれ...?」
俺も混乱していた。
目の前に立つ少女は、紛れも無くオオカミ様だ。
顔立ち、黒髪、声音、そして銀の髪飾り。
なによりも、俺の名前を呼んだではないか。
「貴女は...」
俺が口を開き掛けた時、突然階段の方から声が掛かった。
「沙織、どうしたんだ?大丈夫か?」
どうやら、停まっていた車から男性が出てきたようだ。
「あ。お父さん!大丈夫。今行きます!」
彼女は涙を