狐火
2015-10-21
20151020-『狐火』byあでゅー
その日は月明かりが乏しくて、私は足元を提灯(ちょうちん)で照らしながら急ぎ足で歩いておりました、愛する者の下へ。すると突然提灯の火が消えてしまいました。途方に暮れていると遠くに明かりが見えました。私は火を借りようとその家にお邪魔した分けです。
「こんばんわ」
衣擦れの音がした。暗闇から着物を纏った女が現れた。その女は跪き私に尋ねた。
「如何しましたか?」
「はい、実は提灯の火が消えてしまい難儀しております。出来れば火をお借りしたいのですが」
「貸して差し上げましょう。しかしもう遅い時間です。今日はお泊りになって行くのは明日の朝になさったら?」
お言葉に甘え止まって行く事にした。私は遅い夕げをご馳走になり、おまけにお酒を少々頂いた。こう見ると家には女意外無く、私なんぞがお邪魔するには少々気が引けた。が、女の香と一重の細い瞼に何時しか酔ってしまった。