気まぐれピアス
2009-09-23
石橋純一郎の死体が発見されたのは、週に1度のハウスクリーニングがやってきたときだった。
純一郎は眠っているところをナイフで刺され、発見されたときには死後3日がたっていた。経営する店に姿を現さない純一郎を誰も気にしなかったのは、ちょうど純一郎が休暇を兼ねてイタリア旅行をするスケジュールと一致したせいである。
事件を担当するのは工藤刑事と服部刑事。2人とも若手の有力株と評される優秀な刑事だ。
工藤と服部は手際よく室内を捜索し、純一郎の人間関係を当たった。物盗りの可能性は低く、顔見知りの犯行と思われた。
凶器はキッチンのステーキナイフ。現場で発見された。ナイフに指紋はなし。当日、まだ暗い時間に純一郎の家から走り出した車があったが、車種も運転している人物も特定されていない。
部屋には特別なものはなかったが、浴室の洗面台の下に、小さなダイヤがついた金のイヤリングが見つかった。前回掃除に来たときにはなかったとハウスクリーニング業者が請け合った。少なくともこの1週間に女性の出入りがあったという