陽子のおもいで 第2章 オーディション

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次の日、収録が近づいてきた年末特番の打ち合わせが午前中会議室であって、担当プロデューサーやコナー担当ディレクター連中が集まってああだ、こうだと言いたい放題で、出たアイデアを昼食の前に整理しておこうと一人会議室に残ってメモを清書していると、「失礼しま〜す。」と陽子が顔を覗かせました。
「あれ〜?一人だけ?じゃあ、会議の後片付けさせてもらお〜っと。」と言いながらテーブルの上に乱立しているコーヒーのコップやジュースを飲んだ紙コップなどと集めて回った。
「お疲れさん」と、陽子にいつもと変わりない言い方で声を掛け仕事を続けていると、トレイにコップを積み重ねながら一辺が3卓位ずつ四角くセッティングされた会議机の内側を私の方へ近づいてきた。
そして、もう一寸でぼくの正面に来るという寸前のところで、何かにつまずいたのかトレイを引っ繰り返してしまい、比較的小さな声で「きゃッ」と叫びました。
「どうした?大丈夫か?」と声を掛けて、顔を上げましたが陽子の姿が見えません。
それもそのはずです。散らかったコップをしゃがみ込んで拾い集めていたのです。


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