人魚物語
2015-09-25
20150911-『人魚物語』byあでゅー
1.出会い
ここは北海道、釧路市。
私は幣舞橋の欄干に佇む人魚像。
何時から此処にいるのか、誰に創られたのかは、知りたくは無い。
けれど、私のブロンズの身体は汚れて、誰も振り向いてはくれない。
それが悲しい・・・。
ある日、私の足元に一人の男が佇んだ。
彼は、私の身体についた鳥の糞を取っていたのだ。
私は一言「ありがとう」が言いたくて、立ち去る彼の手を掴んだ。
彼は一瞬驚いた。
(私も驚いた)
そして、裸の私を見て、慌ててコートを掛けてくれた。
私は嬉しくって彼を抱きしめた。
彼は驚いた顔と困った顔をして、
「もしかして、君は人魚像なんだね?」
私はこくり、と頷く。
「寒いだろう、お出で」