咄嗟の一撃
2009-03-20
学生時代、アパートで一人暮らししていた時のこと。
その部屋はやけに細長い部屋だった。1kでトイレ風呂付だったが、玄関から部屋までやけに距離があった。
窓は、部屋側に一つあるだけ。昼間カーテンを開けていても、太陽の光は玄関の方まで差し込まず、玄関と玄関から部屋に続く廊下はいつも薄暗かった。
梅雨時はもちろん、夏でもそこだけは、じめっとした空気に覆われていたもんだ。
ある夏の夜、部屋で寝転がって本を読んでいた。時計を見ると午前三時になろうとしていた。
そろそろ寝るかな、と本を閉じ、トイレに行こうと立ち上がった。トイレと風呂は廊下の途中にある。
玄関に目をやったとたん、全身に粟が立った。
玄関の前に髪の長い女が立っていた。薄暗いのに、やけにその姿は、はっきりと浮き上がって見えた。
誰かが間違って部屋に入ってきたのか? そんなはずはない。ドアの開く音も閉まる音も聞こえなかったし、鍵をかけ、チェーンまでかけていたことをはっきりと覚えている。
夏なのに黒い長袖のワンピースを着