乗り合わせたタクシーの女性運転手
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駅前のタクシープールから乗り込んだタクシーの運転手が女性の声だった。
「どちらまでですか?…あっ…」
ルームミラーで私を確認して彼女は固まった。私はダッシュボードに掲示された運転手の名前を見て固まった。
「お前…美代子か…」
バブル崩壊の煽りを受けたようにして離婚した元妻の美代子だった。
「20年ぶりだな、元気にしてたか?」
「ええ、こうして元気に働いてるわ。」
別れた頃と比べて、柔らかな美人になっていた。
「お前…」
「何よ…」
「今でも綺麗だな…」
「ばかね…」
あれからどうしていたとか、誰かと恋をしたとか、そういうお互いの生活には触れず、車の中だけが昔にタイムスリップした。対向車のライトに時折浮かぶ美代子の横顔を見つめていた。
台所に立つ美代子、向かい合っ