償い

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2004-09-13

月末になると ゆうちゃんは、薄い給料袋の封も切らずに必ず横町の角にある
郵便局へとび込んでゆくのだった

仲間はそんな彼をみて、貯金が趣味のしみったれた奴だと、飲んだ勢いであざ笑っても、 
ゆうちゃんは、ニコニコ笑うばかり



 

僕だけが知っているのだ

彼はここへ来る前にたった一度だけ、たった一度だけ、哀しい誤ちを犯してしまったのだ

配達帰りの雨の夜
横断歩道の人影に、ブレーキが間にあわなかった
彼はその日とても疲れてた
 
『人殺し!あんたを許さない』

と彼を罵った被害者の奥さんの涙の足元で、彼はひたすら大声で泣きながら、
ただ頭を床にこすりつけるだけだった



 

それから彼は人が変わった

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