エロゲーより抜粋

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2007-05-06


              『夜が怖い』と、彼は言った。

 新都玄木坂四番地、蝉菜マンション十一階二号室。
 それが彼の部屋だった。
 彼の名は―――そう、仮にA氏としよう。
 A氏は二十歳になったばかりの学生で、春先に新しく入居してきた。
 生まれて初めての引越し、生まれて初めての一人暮らし、生まれて初めての知らない街。
 内向的な性格をしたA氏は新しい生活に戸惑いながらも、冬木の町に少しずつ順応して言った。
 もとよりA氏は一人でいる方が気楽な性格で、友人が少ない事も、周りが『知らない誰か』である事も、
そう苦痛ではなかったそうだ。
 むしろそちらの方が有り難い。
 部屋に引きこもりがちなA氏は、誰にもーーー友人にも家族にも干渉されない新生活を、
いたく気に入っていたらしい。
 A氏の生活に不満はなかった。

 ただ二つ。
 玄関までの長い廊下と、
 

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