INSTINCT?
2010-12-14
「おはよう、匠巳。よく眠れた?」
ツインの宿の一室で目を覚ました匠巳は、澄んだ優しい声が頭の中に染み渡っていくのを心地良く感じていた。窓際のベッドで、りさが朝日を背に微笑んでいた。さわやかな、よく晴れた朝だった。
「うん、おはよう」
匠巳はそう言って、体を起こした。りさは、パジャマ代わりの白いシャツの格好で座っていた。うーん、と声を上げて、猫のようにひとつ伸びをする。すでに、きちんと整えてあったりさの長い黒髪が、さらさらと美しく流れた。
匠巳は顔を洗いに行く途中、ふと、りさを振り返った。瞳が合った。りさは、ごく自然に、にっこりと笑った。まさに天使のような、罪のない笑顔だ、そう感じた。
りさのためなら全てを賭けてもいい。匠巳は強くそう思う。
…いや、もうずっと前から匠巳はりさに何もかも捧げていた。自分の全て。これからの人生。そして、命さえも。
「あのね、匠巳。今日は仕事が入ってるの」
りさはベッドに寄り掛かって、匠巳の背中に声をかけた。その手には、愛用の細身の刀を何をする