お稲荷様
2008-11-13
晩秋の頃。
山奥の村の畑の畦に建つ社の建替えを請け負った。
親方は他の大きな現場で忙しく、他の弟子も親方の手伝いで手が離せない。
結局、俺はその仕事を一人で行うように指示された。
その社は寺社のような大掛かりな建物ではなく、
こぢんまりとした人一人が入るのがやっとの大きさで、
中に親子の狐の石像が祭られている社だ。
一応稲荷と言えるが、地元の年寄りが掃除をする位の土着の社神である。
良く手入れはされているものの、
ここ何十年以上も手が入っておらず痛みは激しい。
そこで、近所の農家のお年寄りがお金を出し合って建替える事にしたのだ。
小さいと言っても建替えとなればまとまったお金は要る。
農家のお年寄りが出せる精一杯の額だろうが、
その額は材料代にも満たない額。
しかし親方は、「ようがす。これでやりましょう。」と引き受けた。
馴染みの稲荷神社の神主さんにお願いし、祈祷をして貰った翌日。