「思い出は降る雪のごとく遠く切なく・・・」 6
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十二 夫婦の契り その一
それから夜までの時間、私は何も手につかなった。
早く夜になって寝床に入ることばかり夢想して体が熱くなっていた。
私はもうすっかり頭に血が上っていたのである。
その夜、風呂場でいつものように私が久を抱きしめようとすると、
「若さあ、後でぇ、寝床の中でぇきっちり致しましょうがねぇ。」
と、すっと身を交わして逃げられてしまった。
私は、一瞬、久が昼間のことで腹を立てているのかと勘違いして悲しくなったほどだった。仕方なく逸り立つ気持ちを抑えて、風呂から上がると、寝床で久を待ち構えた。
久はいっこうに寝床へやってこなかった。
じれて何度か呼んだが、
「若さあ、ちっとぉ待って下さえまし。」
そう言って中々姿を見せなかった。
いい加減待ちきれなくなってから、久は六畳間の私の寝床にやってきた。
その久の姿に私は心臓があぶつような激しいトキメキを覚