湘南平の鉄塔

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2010-12-02

夜の湾岸道路を、健介の車は西に向かってひた走っていた。
助手席の凉子は窓を開けて涼しい外の空気を気持ちよさそうに吸っていたが、
ふと不安そうな顔を健介に向けた。
「大丈夫なの?追いかけてくるんじゃない?」
「平気さ。こんなとこを走ってるなんて考えないだろうから」
凉子は小さく微笑んで、助手席に体を埋めた。
大学の同級生で共に青春を過ごした仲間である凉子。健介は心密かに彼女のことを思い続けていた。
凉子はそんな彼の気持ちを知ってか知らずか、無邪気に自分の秘密を彼に打ち明けた。
しかし彼女の告白は健介には全く受け入れがたいものだった。
健介はある決意を込めて彼女を半ば強引に連れ出し、自分の車に乗せたのである。
「凉子。今日こそ君に僕の本当の気持ちを伝えたい。僕は君を…」
横を見ると、凉子は助手席で小さな寝息を立てていた。
「眠ってしまったのかい、凉子」彼は車を停めると、抑えがたい悲しみを抱えたまま、
ゆっくりと凉子の首元に手を伸ばし

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