どんなときでも優しかった相撲部屋のおかみさん

開く
2019-03-12

この体験談は約 8 分で読めます。

もう時効だと思うから書く。

俺はだいぶ前に相撲の世界にいた。
小学校1年から柔道をはじめ、高学年の頃は県大会で優勝したこともあって、スカウトされて柔道の強い中学でもメキメキと力をつけていった。
中学卒業を控えて強豪校の高校からの誘いもあったけれど、たまたま中学の柔道部の先生の知り合いのつてで相撲部屋の親方が興味を示し、突然俺に会いに来た。
家の近くの河原に連れて行かれ、裸足でシコを踏まされ、汽車が通る鉄橋の柱に向かって鉄砲(両手で突くやつ)をさせられた。
親方は無言で腕組みして、汗だくでやっている俺を見ていたが、やがて「俺んとこに来い」と言った。
俺は、普通に高校に行って柔道をやって、将来は柔道の指導者になりたいと思っていたので、素直に「はい」とは返事できなかったけれど、初めて会った親方の堂々として、それでいて優しそうな雰囲気に引き込まれた。
1週間ほど考えて決めた。

「相撲取りになろう」と。

卒業式が終わるとすぐに荷物をまとめて家を出ることになった。


お勧めの体験談