タクシーの運転手
2013-03-30
タクシー運転手の奥さんが、まだ五才に なったばかりの子を残して亡くなった。 父親は仕事ででかけている時間が長く、そ のあいだ隣の家に子どもを預けていたのだ けれど、深夜になっても帰ってこないのも のだから、親切で面倒をみていた隣人もさ すがにしびれを切らして、子どもをひとり の家に帰してしまうことも多かった。 子どもは寂しくて、父親が帰ってくるま で、親の名を呼んで泣いていたそうだ。
ある晩、子どもの泣き声がぴたっと止ま り、笑い声が聞こえてきた。 隣人は、「ああ父親が帰ってきたのだな」 と納得したのだけど、そのしばらくあとに 父親の帰宅する音が聞こえてきて、「父 ちゃんおかえり」と子どもが出迎えてい る。
そうした夜が何晩かつづいて、不審