いわくつき物件
2016-08-04
不動産関係で働く友人が体験した話。
とあるアパートに、なかなか人の居つかない部屋があった。
よくありがちな、幽霊が出るといった明確な怪異が起こる訳ではなかったのだが、その部屋に入居した人間の話によると、そこで暮らし始めて間もなくすると、特に理由もなく言い様のない不安や恐怖を感じるというものだった。
『部屋の中に何かが存在している』
入居者はそう言って、早々と退去してしまうため、そのアパートの大家も困り果てていた。
友人の会社も出来る限り調査はしたのだが、その部屋で殺人事件や自殺があったという記録もなく、部屋の素材に何らかの有害物質が含まれている訳でもなく、何より他の部屋の住人は特に異常を訴える事なく平穏に生活していた。
「Aさんっていう、霊能者の先生に見てもらう事にした」
ある日、そこのアパートの大家と懇意だった社長は、そう言って友人に霊能者を同行してそのアパートへ行くよう命じられた。
不動産業界の伝手で紹介してもらったというその男性霊能者は、なかなか評判のいい高名な先生だったようで