As Time Goes By

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2016-06-09

小学生の時、古本屋の親父さんと仲良くなってね 本ばっかり読んでる暗い子供だったけど、家が貧乏で新刊本は手が出なかったから本はもっぱら図書館で借りて、小銭を貯めてはその古本屋の50円均一の文庫コーナーに行くのが唯一の楽しみでさ
そのうち親父がおすすめの本や作家を薦めてくれるようになって、小銭がなくてもよく立ち寄るようになったんだよ

服や靴で貧乏だってのが分かったのか
たまに全集の半端ものなんかを「どうせ売り物にならんから」ってタダでくれてさ
ほんとうれしかったな

お礼に本棚にはたきかけたり、本を運ぶの手伝ったりしてさ
今考えるとずいぶん邪魔したんだろうけど、楽しかったよ

ある時、親父さんが店を閉めることになったって言ってきて「これやるよ」って山岡荘八の「徳川家康」全32巻が入った段ボールをどんっと出してきたんだ
そのころ歴史小説にハマってた俺の気に入るものをと思ったんだろうな
でも俺は親父さんがいなくなるのが悲しくてろくにお礼も

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