優勝フーリガン
2010-09-04
警官隊ともめる若者たち、橋から飛び降りる人々。
大通りはあらゆる喧騒に満ちていたが、その裏手の廃ビルの中は、
少年の頬を張る音が響き渡るほどに静寂だった。
「おいガキ、さっきお前なんて言ってた? 18年は長かったって? 」
「ふざけんじゃないよっ! 18年前にはてめぇ、オヤジのこん中に入ってたんだろーが!」
声の主は高校生くらいだろうか――その2人の少女のうち、1人が
部屋の隅でしりもちをついていた少年の股間を激しく蹴りつける。
生まれて初めて体験する男の痛みに、
少年は断続するうめき声を上げてうずくまることしかできない。
頬を張られたときに飛んでしまった、少年のキャップが少女たちの目に留まった。
汚れた床の上で目立つ白に、細い黒のストライプ柄が目に飛び込み、
オレンジ色のうさぎのようなマスコットを
カバンにつけている少女たちをさらに興奮させる。
「優勝したのがそんなにうれしいかよ? おかげでアタシたちは不快極まりないってのに!