嘘の縺れ
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「じゃあね」
「おぅ」
手を繋いでいた二人は名残惜しそうに手を離すと、喧噪の溢れる駅で別れた。
彼等の姿を見れば皆一様に、お似合いの仲の良いカップルに見えるだろう。
しかし、二人はお互いに嘘をついていた。それは軽い気持ちだった。
相手に対する罪悪感は確かにあったが、これが堅固な愛情の崩壊のはじまりなんて考えもしなかった。
その日、信二は始めて合コンに行くことになった。カラオケのバイト仲間に誘われたからだ。
最初信二は合コンに行く気などなかった。
仁美という彼女がいることもその一つの理由だが、
そもそも唐沢を筆頭とするバイト仲間と以前から反りがあわなかった。
唐沢達はいわゆる不良で、高校を中退した後、様々な悪事を繰り返しているという悪い噂しか聞かない。
バイトに対する姿勢など信二とは相容れないものがあった。
その信二が彼等と合コンに行くことになったのは、普段にはない言葉使いでどうしてもと頼まれたからだった。
「頼むよ水橋。俺だ