雨
2018-10-27
土曜の昼下がりの雨の中、僕のアパートに突然入江文香が訪ねて来た。彼女は申し訳なさそうに、
「じゃま?」
と前髪の雨粒を手で拭いながら言った。僕は、そんなことないよと言って、幸田小枝との約束まで、まだ時間があることを確かめた。文香の全身は雨に打たれたとしても、余りに濡れそぼっている。僕は、急いでバスタオルを彼女に差し出した。髪を拭きながら彼女はつぶやく。
「そう言えば、前にも同じようなことがあったよね」
「そうだったね」
僕は、そう言って微笑んだ。
あれは、文香とはじめて会った時だった。僕は入社したてで外回りの研修課題に飛び回っている時だった。朝から酷いにわか雨に降られ、喫茶店の店先で雨宿りしていた。タクシーを拾おうとしたが、突然の雨に中々止まらなかったのだ。あきらめて雨といをながめていると、リクルートスーツの女性が飛び込んできた。僕は、連日の徹夜仕事で風呂に入っていなくて距離をおこうとしたが、彼女に腕を掴まれた。
「すみません。わたしが、おじゃましちゃって