斜陽診療所

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2010-02-16

 俺は今小さな港町で小さな診療所をやっている。
 もともと俺は山崎豊子の『白い巨塔』を見て医者に憧れたクチなんだ。つっても、里美じゃなくて財前のほうに。
 後ろに若手や弟子筋を引き連れた回診シーンなんかかっこいいなあと思った。権力闘争に勝ち抜いてこそ、立派な男になれるんだ、と信じていた。
 それで死ぬほど勉強して医学部入って、人様のお金で海外修行も経験させてもらって、医局に戻って、しかし出世競争に敗れて地方に飛ばされて発狂。
 キャリアを全部かなぐりすてて、地縁も何もない田舎町に開業したのが七年前だ。年は当時、三十五だった。

 結構堅物な育ちだったからさ、それまで娯楽とか知らなかったんだよ。パソコンも仕事と勉強でしか使わなかった。
 でも、ネットって面白いんだな!教えてGOOとかで健康相談に答えて感謝の言葉をかけてもらったり、Eメールで遠くの友達とやりとりしたり、精神科の医者をからかったりしているうちに、頭がおかしくなったのも治っちまった。世界が狭かったなあ、としみじみ思うよ。
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