DVD-R
2006-12-20
工藤と別れた美希が俺と付き合ってくれることになった。
「よろしくお願いします」という彼女のメールはずっと大事
する、そう思っていた。だけど、ある日、ドイツ語の授業が
終わった後、目の下にくまつくった工藤が酔ってきて、黄色
い歯、剥き出しにして「俺の使い古しの味はどうよ?」と。
迷わず殴った。殴っても工藤は床の上で、げらげら笑ってい
た。そしてカバンの中からコンビニの袋取りだして「コイツ
観ても、あいつとセックスできるか?」。
帰りの電車の中ではもっと殴ってやれば良かったと後悔した。
工藤から渡されたモノも、駅で捨てるつもりだった。でも、捨
てられなかった。観ないつもりだったのに袋を開けてしまった。
馬鹿げた誘いには乗らない。そう思っていたのに。ちらりと覗
いた中身はDVD-Rだった。工藤のあの下品な笑いを想い出
すと、こいつの中身は工藤と美希の、だろう。「使い古し」と
いう言葉が耳にこびり付いて