遺棄された日本兵の話
2008-08-01
<一部、作者によって編集されています>
1945年の冬、冷たい北風が吹き、大雪が舞っていた。
黒石街の入口付近を通りかかった河南省南召県太山廟村の農民・孫邦俊
は、大勢の人々が一人の乞食を囲み、殴る蹴るをしているのを見た。
一人の男が棒で乞食の腹を叩きながら、
「お前は俺たちの仲間を何人殺したんだ。
お前なぞどんなに切り刻んでも足りない」
と、激しい声で怒鳴り罵っていた。
乞食の頭髪は短く、弾痕で無数の穴が開き、汚れきった軍服を着ていた
が、体を丸め、恐怖でちぢみ上がっていた。
その乞食は、遺棄された日本兵であった。
孫邦俊はその乞食が可哀相になり、周りの人々にさまざまに頼み込んで、
乞食を助け、連れて帰った。
孫邦俊は、負傷したこの日本の廃殘兵を『我が弟』のように養っていく。
戦闘で頭部に重傷を負ったらしいが、脳の損傷が少なかったのか、