美和さん
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ある日、いつものように学校から帰って玄関の鍵を開けようとポケットの鍵を取り出そうとすると、すすり泣く声が聞こえてきた。
ふと顔を上げて、向かいの家をみると、美和さんが後ろ向きになってるのが見えた。
小さな庭に入り、濡れ縁まで近づくと、美和さんは、横座りになって肩を落として畳を見つめ、泣いていた。
どきどきした。見てはいけないものを見てしまった気がした。
シオンちゃんは今日はいないようで、静かな家の中には、時々洟をすする音が響いていた。
見て見ぬ振りしようと、後ろずさろうとしたら、「ケン君?」と、後ろ向きのまま声を掛けられた。
「うん」
「おかえり」
「ただいま」
「・・・・」
「・・・・」
悲しい気持ちが声に出てて、たまらなくなった。
畳にあがり、膝をすりながら、すぐ傍に近づいた。
下を見ると、畳がぽたぽた落ちる涙で濡れていた。
「おねえ、ちゃん?・・・」
耳がきーんと鳴っているよう