志穂、哭く
2004-08-09
冷蔵庫を開け、志穂は中からよく冷えた牛乳を手に取った。
そのまま扉を閉じようとして少し佇み、夫が帰宅した時のために用意してある
ボトルワインを牛乳と一緒に取り出した。
「はい等、牛乳」
「うん。あ、ママいけないんだ。こんな明るいうちからお酒なんか飲んで」
「ゴメンね……でもママ、たった今飲みたいの」
「ふーん」
志穂は等にミルクを注いであげたあと、自分もワイングラスに深紅の液体を注
いだ。自ら進んでアルコールを取る事など、あまりない。どちらかといえば酒
に弱い方の志穂は、外での食事の時や夫との晩酌の時に軽く口をつけるぐらい
でしかアルコールを嗜まない。
テーブルの向かいで等が、志穂の方をじっと見ながらコップの牛乳を一所懸命
飲んでいる。苦手な牛乳を飲めば、ママが喜んでくれる。だからこそ等は牛乳
を飲むようになったのだ。
「ぷはあ!ママ、今日も牛乳ちゃんと飲めたよ!」
純真無垢な笑顔で、