「思い出は降る雪のごとく遠く切なく・・・」 3

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六 手淫の誘い 
「若さあ、起きんがいね。」
次の朝、私は久の声で目覚めた。
まだ寒さが残る、しかしよく晴れた明るい早春の朝だった。
昨夜のことが一瞬に蘇った。
あれから久は自分の寝床に戻り私もまた力尽きてすっと眠りに落ちてしまったのである。下腹に手をやるとかすかに何かの気配が残っている。
しかし、それだけで普段の朝と少しも違わなかった。
久はすぐに朝餉の支度をして、私たちは昨夜と同様に六畳のちゃぶ台で向かい合って差し向かいの朝食を摂った。
    
 お互いに昨夜のことは一切口に出さなかった。
確かに自分は久の体を抱き、乳房を吸い、下腹をまさぐったはずだった。
しかし、それは本当だったのか?と思うほど久は全く何事も無かったそぶりだった。
ただ、一つだけ何となく違っていたのは、久と自分の間のぎこちない空気がなくなっている事だった。昨日はまだ一緒の部屋に二人きりでいるぎこちない空気があったが、それがすっかり無くなって


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