ダメなおかあさんでごめんね
2012-10-30
もう五年前ぐらいの話かな。
人前ではほとんど泣いたことのない俺が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった。
お袋は元々ちょっとアタマが弱くて、よく家族を困らせていた。
思春期の俺は、普通とは違う母親がむかついて邪険に扱っていた。
非道いとは自分なりに認めてはいたが、生理的に許せなかった。
高校を出て家を離れた俺は、そんな母親の顔を見ないで大人になった。
その間実家に帰ったのは3年に1回程度だった。
俺もいい大人になり、それなりの家庭を持つようになったある日、
お袋が危篤だと聞き急いで病院に駆けつけた。
意識が朦朧として、長患いのため痩せ衰えた母親を見ても、
幼少期の悪い印象が強くあまり悲しみも感じなかった。
そんな母親が臨終の際、俺の手を弱々しく握りこう言った。