きき?かいかい?

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2010-03-15

周囲を岩壁に包まれた洞窟の中に1人の少女がいた。
どういった原理か岩壁が放つほのかな光に照らされた少女は巫女装束に身を包んでいる。
薄く汗を浮かべ、頬をわずかに上気させながら少女が視線を向ける先には、小柄な少女の倍はあろうかという大狸がいた。
実際の狸というよりは信楽焼きの置物に近いずんぐりとした体型のその化け狸こそが、今回その巫女装束の少女――日和に与えられた任務の標的だった。
人間の言葉、しかもなぜか関西弁を放っていた化け狸の口から今迸っているのは洞窟を崩落させるのではと思うほどの絶叫だ。
その原因は風船のように膨らんだ腹に刻まれた1筋の裂け目。
それを作ったのは彼女が手に持っている刃渡り3寸ほどの短刀だった。
(手応えはあったし、これで終わってくれれば)
大きさこそ化け狸の巨体に比べてあまりにも頼りない武器ではあったが、霊的に強化されたその短刀は妖怪の類にはわずかな傷でも容易に致命傷となるはずだった。
永遠に続くかと思われた化け狸の断末魔の絶叫が萎むように小さくなり、そのままゆ

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